この記事で解決できること
- 年末調整って何をするの?
- 年末調整はどんな人が対象になるの?
- 年末調整の業務は、経理と総務ならどっちの仕事?

こんな悩みを解決します。
日商簿記3級、経理・契約5年、給与・社保5年のよんちゃわんが説明いたします。
「年末調整って聞くだけで難しそう…」そんなふうに感じていませんか?
経理として初めての年末調整ともなれば、身構えてしまうのも仕方がありません。
経理になる前は、毎年配布される申告書の内容がよくわからなくても、12月の給与がなぜかちょっと増えているので喜んでいましたが。
この記事では、経理初心者でも年末調整の流れをイメージできるようにやさしく解説しているので、仕組みを知ってしまえば問題なくこなせますよ。
記事前半では「年末調整とは何か」について、後半では「年末調整の手順」について解説するので、参考にしてくださいね!
そもそも年末調整ってなに?

年末調整とは、1年間の収入が確定する12月に、従業員の1年間の所得税を正しく計算し直す作業のことです。
毎月の給与から天引きされている「源泉所得税」は概算額だって知ってましたか?
なので、12月の給与や賞与を含めた年間の所得が確定した時点で、実際の税額との差を調整する必要があるんです。
その結果、多くの場合は払いすぎた税金が還付されますが、人によっては追加で徴収されることもあります。
そうすると年末調整は、税金の精算という大切な手続きと言えます。
個人でこの作業を行う(確定申告をする)かわりに、会社が全部やってくれるというのはありがたいシステムです。
年末調整の対象者
会社勤めの人は全員が年末調整の対象となるのでしょうか?
ざっくり言うと、会社から給与を受け取っているほとんどの従業員(正社員だけでなく、アルバイトやパートも)は年末調整の対象になります。
ただし、次のようなケースでは対象外になることがあります。
対象外になるケース
- 年収が2,000万円以上ある
- 副業などで複数の収入源があり、他の勤務先で扶養控除申告書を提出している
- 非居住者として扱われる場合
- 日雇い労働者など、継続した雇用関係がない場合

逆に、退職や海外赴任といった事情で途中でも年末調整を行う必要があることもあります。
経理がするの?総務がするの?
「年末調整は経理が担当するのか、それとも総務なのか?」
年末調整の担当部署は確かに気にはなりますが、会社の大きさや体制によってどの部署が担当するかは違います。
各部署が年末調整を担当する理由
経理部・・・数字に強く、税務処理に慣れているから
総務部・・・書類を扱うなど、人にかかわる仕事だから
経理・総務共同・・・総務で書類回収と従業員対応、経理で税額計算
結局のところ年末調整は、「経理と総務の両方に関わる業務」なのでどこがやってもいいのです。

後ほど話しますが、うちは人事課がやってます。
次に年末調整の手順について解説します。
具体的な年末調整の手順

年末調整は「給与から引かれてきた概算の所得税」と「本来払うべき正しい税額」を突き合わせて調整する重要な業務です。
でも流れを押さえておけば、複雑に感じる作業もスムーズに進められます。
以下の手順ごとにやるべきことを整理して進めていきましょう。
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1法改正のチェック
まず忘れてはならないのは、最新の法改正を確認することです。
例えば基礎控除の金額や、定額減税などの新制度は年ごとに変わります。
知らないまま作業を進めると、間違った控除額で計算してしまうリスクがあります。
事前に国税庁の公式サイトをチェックして、前年との違いを確認しましょう。
給与ソフトを利用している場合でも、法改正に合わせた更新が必要になるため注意が必要です。
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2書類配布(10月下旬~11月上旬)
従業員へ申告書を配布します。
主な書類は以下の3つ(4つ)。
従業員へ配布する主な申告書
- 基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
- 扶養控除等(異動)申告書
- 保険料控除申告書
- 住宅借入金等特別控除申告書(住宅ローン控除を申請する人のみ)
配布の際は、提出期限を明確に伝えることと、必要な添付書類(保険会社の控除証明書など)を忘れないよう周知することが重要です。
各申告書の記入例も一緒に配布すると、記入の手助けになるので必ず一緒に配布しましょう。
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3書類回収と内容チェック(11月中旬~下旬)
書類が返ってきたら、まずは回収状況を整理し、内容を確認します。
書類を整えて提出するスピードは従業員によってバラバラです。速やかに提出する人もいれば、なかなか提出しない人もいます。
効率よく書類を回収しつつ、書類内容のチェックを進めていきましょう。
この段階でのミス発見が後のトラブルを防ぎます。
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4納税額の過不足計算し、12月の給与で調整(12月上旬~中旬)
書類チェックが終わったら、いよいよ税額の過不足を計算します。
具体的には、
- 給与総額から控除を差し引いて課税所得を求める
- 税率表に当てはめて年税額を算出する
- 1年間で源泉徴収された金額と突き合わせる
この差額がプラスなら追加徴収、マイナスなら還付です。
多くの従業員は税金が戻ってきますが、追加で納めるケースもあるので丁寧に説明しましょう。
還付や徴収は12月または1月の給与支給時に調整されます。
なお、還付は会社が一時的に立て替える形になるため、源泉所得税の納付時に必ず精算処理を行いましょう。
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5源泉徴収票配布と市区町村への報告(12月下旬~翌年1月末)
最後の大きな作業が、源泉徴収票の作成と配布です。
年末調整で確定した金額を基に、1月末までに従業員へ交付します。
同時に従業員の居住する市区町村へ「給与支払報告書」を提出します。
この書類は翌年の住民税計算に直結するため、間違いは大きなトラブルにつながります。
そのため給与ソフトを活用しつつ、出力後に金額が正しいかを必ずチェックしましょう。
ここまで完了して、年末調整はようやく一区切りです。
年末調整を人事課でする(体験談)
年末調整の業務については、私の職場では人事課がやっています。
人事課は、「人の採用」「給与計算」「社会保険業務」などのほか直接社員にかかわる仕事をしています。
そして年末調整の作業は、給与計算・社保業務の一環で給与・社保担当が数名のチームでこなしています。
毎年1回のルーチンワークですが、限られた期間内に完了させるため、準備と集中力と体力は欠かせません。
なぜなら人事システムから源泉徴収票や給与支払い報告書を発行するまでの作業は、ほとんど人の手で行われるからです。

人事課での作業が終わったら、専門家(社会保険労務士)にダブルチェックに出していました。そのため作業スケジュールはタイトでしたよ。
年末調整に関する Q&A(3つ)
Q1: 源泉徴収票はいつ誰に配るべきですか?
A: 翌年1月末までに従業員と市区町村へ配布・提出します。
Q2: 複数の勤務先がある人はどう扱うの?
Q3: 医療費控除は年末調整で処理できますか?
A: いいえ、医療費控除は確定申告で処理する必要があります。
まとめ
年末調整は、「給与から天引きした概算の税額」と「実際に支払うべき税額」を調整する重要な業務です。
ほとんどの従業員が対象となり、正社員だけでなくアルバイトやパートも含まれます。
ただし、高所得者や副業がある人などは対象外となるケースもあります。
担当部署は会社によって経理や総務、人事などさまざまですが、大切なのは 正確な作業を期限内に行うことです。
一つ一つの流れを押さえて進めれば、初心者でも確実に対応できます。
- 法改正のチェック
- 書類配布
- 書類回収と内容チェック
- 納税額の過不足計算し、12月の給与で調整
- 源泉徴収票配布と市区町村への報告
年末調整に必要な書類は以下の3つ(4つ)
年末調整に必要な書類
- 基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
- 扶養控除等(異動)申告書
- 保険料控除申告書
- 住宅借入金等特別控除申告書(住宅ローン控除を申請する人のみ)
年末調整は確かに手間のかかる業務ですが、準備とスケジュール管理を意識すればスムーズに進められます。
初心者の方も焦らずに流れをつかみ、先輩やマニュアルを頼りながら経験を積んでいきましょう。
ここまで読んでいただきありがとうございました。